2019-01-01から1年間の記事一覧

『日はまた昇る』

1 外国での思い出と言われて思い浮かぶものは人それぞれなのだろうか。私の場合、頭に浮かぶのが酒場の記憶であることが多い。酔っている時、周りの世界と自分が薄いガラスで隔てられていて、自分の見ている光景や聴いている音が他人事のように感じられるこ…

雑記

芥川賞受賞作品は滅多に読まないのだけれど、柴田翔の『されどわれらが日々』(1964年受賞) は読んだことがある。最近読み返したわけでもないので筋はほとんど忘れてしまったのだが、昨日ふと読後感だけ思い出した。ゲーテの『ファウスト』の講談社文芸文庫の…

『赤と黒』

1 『赤と黒』は高校生の頃、授業中机の下に文庫本を隠して夢中で読んだのを覚えている。退屈な授業ほど読書に専念できたのでむしろ楽しみにしていた。本に関しては物持ちがいいので15年ほど前に読んだ文庫本そのものをパラパラとめくりながら書いているが、…

『テレーズ デスケルウ』

1 普段あまり小説を読むのが好きだと人には言わないのだけれども、たまたま何かの拍子に文学が話題に上ったときには否応なく好きな小説は何かという話になってしまう。個々人の好き嫌いなど取るに足らない問題であって古今東西の言葉の芸術がどう発展してき…