小説は今年は『失われた時を求めて』を読み終えるまでは他に手を出さないと決めているので岩波文庫版でコツコツと読み進めている。昔ちくま文庫で挫折したのだが(つまり私の家には『失われた時を求めて』が2セットもある。)、岩波文庫の方は注記がわかりやすく丁度半年で7巻まで読了したため、年末までには全14巻読み終えるペースである。感想は読み終えたところで年末にでもゆっくり書き残したいと思う。が、既に同書に関する関連書籍を5, 6冊仕入れてしまっているのでそれらを読もうと思うと2022年も半ばになりそう。
メモを見返すと他には仕事に関連して読んだ書籍を除いて以下のような本を読んでいた。
『偶然と必然』(ジャック・モノ―)
遺伝子発現の制御に関するオペロン説や酵素のアロステリック調整などの発見で有名な、高校生物の教科書でもお馴染みのノーベル賞学者、ジャック・モノ―の科学に関するエッセイ。東大の佐藤直樹先生が『40年後の「偶然と必然」』という本で詳解しているのを最近本屋で見つけたのでそちらと合わせて精読したいと思っている。生命とは何かというトピックは最新のものから、モノ―のようなレジェンドの書いたものまでなるべくカバーしたいと思っている自分の中の重要テーマ。
先日亡くなったジャーナリストの立花隆によるインタビュー。利根川進がノーベル賞を受賞した直後から彼の周りにむらがってくる普通の新聞記者があまりにも不勉強で鬱陶しいのでちゃんと勉強しそうな人から長めのインタビューを受ける、ということにしたというのがきっかけでできた本とのこと。利根川進が上記のモノ―なんかをはっきりと意識していた分子生物学者(免疫学者でなく)ということは不勉強であまりピンときていなかった。インタビュー通して感じたのは、重要な発見をする人は、「重要な発見をしなきゃならない」と思っているものなのだな、という感想。本の中でも揶揄されていたが、特に生物学だとAという種で発見された仕組みがBという種でもありました、でも一応論文にはなるわけだが、あまり意義はないだろう。
『探求する精神』(大栗博司)
一流の物理学者による半生の回想録。似たような憧れや問題意識や好奇心を持っても、搭載している脳みそのスペックが違うとこれだけ見えてくる景色に差が出るのだなと落ち込む本。面白いのですけれどね。
『科学を語るとはどういうことか』(伊勢田哲治・須藤靖)
体系だった科学哲学の教科書ではなく自然科学(物理学)の研究者が科学哲学の専門家に議論・疑問をぶつけていくというもの。 この手の議論はもっと雑なレベルで大学生の頃にもよくしたものだけれど、科学についても哲学についても知的体力不足によって自分の中でケリのついていないテーマである。勉強すべきことは多い。
『西洋美学史』(小田部胤久)
美術史ではなく美学史。美しいとは何か、芸術とは何か、という問題は私の中で一、二を争うくらい長年の思考テーマ(の割に判断力批判を通読していないのだが)。プラトンから始まり、現代のダントーらまでカバーされており教科書としてとても優秀。
『美学』(小田部胤久)
上記の姉妹本。専らカントの第三批判である『判断力批判』の解説に重点が置かれた本。カントの理路を正確に追い切ることが私の目的ではないものの、曲解しても仕方ないのでこの本などを使いながら第三批判ときちんと向き合うべきかと悩んでいる。
美学に関連して。悲劇や喜劇、叙事詩に関して、その構成や内容がどうあるべきかなどをアリストテレスが整理したもの。これもあまり厳密に追うつもりはないがこれで「ミメーシス」という言葉を心置きなく使える…だろうか。
『近代絵画史(上)』(高階秀爾)
だいぶ昔に一度読んではいるのだが、カラー版が出ているのに気付いたため買いなおしたついでに再読中。外国の美術館に行きたくなる。
『哲学入門』(バートランド・ラッセル)
これは読みやすいので、さらっと読めばよいのだが、ラッセルは『西洋哲学史』や『数理哲学入門』を読まないと、という話。そしてまず哲学に関してはきちんと純粋理性批判を読まなければという長年の宿題を後回しにし続けている。
『集合への30講』(志賀浩二)
集合・位相の勉強をしてみたいと思い立って、教科書を買ってみたもののとりあえず取っつきやすい本から読もうかと思い手を出してみた。数学は雰囲気だけじゃ意味ないので教科書を読もうと思う。
『エマニュエル・トッドの思考地図』
軽いエッセイ。頭の良さにも色々な種類があるのだという本。フランス人の学者の割に哲学が嫌いというのが面白かった。あとこっそりブルデューを馬鹿にしている(自明な結論のためにデータ集めをしているので仕事がつまらないとのこと)。ディスタンクシオンは美学との関係で読むべきか、と悩んでいるものの長いので購入すらしていない。
小説を入れて全部で18冊。実は今年の上半期は仕事がかなり多忙で体力的に厳しかったものの、うまく時間を見つけて読書の時間を取れたほうだと思う。